最新の内閣府景気ウォッチャー調査結果についてのレポートを紹介します。
令和元年5月の景気ウォッチャー調査結果(東北分)
調査結果の概要
1.今月のDI※
季節調整値
(1)現状判断(3ヶ月前との比較、方向性 季節調整値)
現状判断DIは「40.8」と2ヶ月ぶりに前月を下回った。前月と比較し▲4.0ポイントと大幅に下回った。
(2)先行き判断(2~3ヶ月先の見通し、方向性 季節調整値)
先行き判断DIは「45.5」と2ヶ月連続で前月を下回った。前月と比較し▲1.6ポイントとやや下回った。
原数値
(1)現状判断(3ヶ月前との比較、方向性)
現状判断DIは「42.4」と2ヶ月ぶりに前月を下回った。前月と比較し▲4.8ポイントと大幅に下回った。
(2)先行き判断(2~3ヶ月先の見通し、方向性)
先行き判断DIは「46.4」と3ヶ月連続で前月を下回った。前月と比較し▲0.8ポイントとわずかに下回った。
※DI(Diffusion Index)について…50を基準とし、50を超えると景気が良い方向にあることを示す。
2.調査の概要
調査期間 令和 元年 5月25日~31日
回答者数 181/189名、回答率95.8% (全国1,850/2,050名、90.2%)
3.特徴的と思われる判断理由(ウォッチャーのコメントから抜粋)
(1)現状判断理由
○「やや良くなっている」
(住関連専門店)…当店では、店頭販売の他にカタログでの販売も行っている。ゴールデンウィーク中はカタログでの販売を中止していたが、その後の販売は好調であり、今月の数字を押し上げている。
(観光名所)…ゴールデンウィークの効果や、天候に恵まれたことにより、遠方からの来客数の伸びが良く、売上増加につながっている。
(人材派遣会社)…オフィス系の派遣ニーズの推移に大きな変動はないが、軽作業や製造系ニーズは依然として高い。また、ゴールデンウィーク明けからは求職者にも動きがみられている。
○「変わらない」
(百貨店)…例年ゴールデンウィークは閑散としているが、今年は10連休効果なのか帰省客が多かったほか、比較的若い客層の来店が多く、スポーツ系のイベントが終日にぎわうなど例年にない動きがみられている。ただし、その後は連休の反動もあり購買につながらず、苦戦となっている。
(スーパー)…ゴールデンウィークは、改元に伴うお祝いムードで高単価の刺身、寿司、ステーキ、焼肉などの動きが例年になく良い状態であった。中旬以降も天候に恵まれ、飲料、アイス、カットフルーツなどの夏物商材が例年になく動いている。しかし、月間の店舗全体の売上、来客数の動きに大きな変化はない。
(コンビニ)…ゴールデンウィーク期間中は好調であったが、その後の客の動きはほとんどが目的買いとなっている。衝動買いが少なくなっているため、全体的に横ばいの推移となっている。
(家電量販店)…白物家電において、特にエアコンは前年の猛暑の影響で買換えや新規購入の需要が高まっており、販売量の前年比は120~130%となっている。ただし、テレビを中心とした黒物家電の売上が伸び悩んでいる。
(ショッピングセンター)…ゴールデンウィークは好調に推移したものの、その後の来客数は落ち着いている。ただし、全体でみれば底堅く推移しているため、依然として順調な景気の動きとなっている。
(一般レストラン)…ゴールデンウィーク期間中の中だるみや、連休後の落ち込みを心配していたが、周囲で閉店した店舗の客が流れてきているのか、来客数は毎日好調に推移し、売上も前年を上回っている。また、今までは連休中も曜日の関係で出社していた人が、今年は長期の休みが取れたことで、スムーズに予定を立てることができ、遊びに出る人が増えたことも大きい。
(通信会社)…10連休となったゴールデンウィークの来客数は8割程度である。ただし、期間中に2日間の店舗休業を実施したが、特段の影響は見受けられていない。
(美容室)…ここ数か月の来客数が前年比101%前後で推移している。
(リフォーム業)…住宅設備のエアコンの受付は増えているものの、増改築のリフォーム工事が減ったことにより、受注金額は伸びていない。
(食料品製造業)…10連休というゴールデンウィークでは土産物がよく動いていた。しかし、連休最後の2日から余り動かなくなり、その後の動きも悪くなったため、前半の貯金を食いつぶす形となり、最終的には前年を下回る売上となっている。
(金融業)…住宅ローン、マイカーローンなどの個人向けローンは堅調であり、底堅い感がある。
(飲食料品卸売業)…ゴールデンウィーク期間中は観光客によりにぎわったが、連休前に投入した流通在庫が消化されるほどではない。その後は消費の盛り上がりもなく停滞している。
(新聞社[求人広告])…不足する人材を、新卒一括採用以外の手法で確保する動きが出るなど、積極的な採用から様子をうかがう姿勢に転じてきている。
(職業安定所)…月間有効求人数は3か月前と比較して3.5%増加しているものの、有効求職者数も増加している。また、有効求人倍率も例年の動きと同様であり、景況感に大きな変化はみられていない。
○「やや悪くなっている」
(商店街)…ゴールデンウィークにこれといった動きがないまま、5月も終わりとなっている。
(ガソリンスタンド)…販売量の減少傾向がより強まってきている。ゴールデンウィークによる増加もなく、連休後の販売量も減少傾向にある。
(高級レストラン)…全ての会社が直接の影響を受けているわけではないが、米中貿易摩擦の影響で消費マインドが落ち込んでいるように見受けられる。
(観光型ホテル)…ゴールデンウィークに予約が集中したことで、その後は例年よりも利用客が少なく、週末でも空室が出るような状況である。
(都市型ホテル)…ゴールデンウィークは、10連休の影響で宿泊、レストランなどの個人部門の売上が伸びたものの、その後は反動で減少している。また、企業の動きが低調であり、宴会場の利用も減少している。
(旅行代理店)…ゴールデンウィークの需要が良かった反面、それ以降の個人消費の動きが落ちてきている。特に5月より先の予約は例年よりも動きが弱い。
(タクシー運転手)…タクシー業界は自社、他社共に乗車率が振るわない状況である。さらに、路線バスについても同様であり、全体的に景気は良くないとみている。
(出版・印刷・同関連産業)…飲食業から広告を集めて雑誌を発行している出版社などにおいて、広告の集まり具合が悪くなっている。
(窯業・土石製品製造業)…出荷が増えているのはごく一部の地区だけであり、東北全体としての出荷量は微減傾向が続いている。
(建設業)…官庁工事の設計変更があり、民間工事も小規模案件の受注にとどまっている。
(広告代理店)…長いゴールデンウィークの影響か、いつもの月と比較して半分の発注量となっている。
○「悪くなっている」
(書店)…10連休となったゴールデンウィーク後半から、一気に消費が停滞している。モールなどに出店している店舗全体でみても、客単価による多少のカバーはあるものの、来客数、買上点数共に落ち込んでいる。
(衣料品専門店)…ゴールデンウィークの長期化により、ショッピングセンターや行楽地はにぎわったものの、人の動きが分散したことにより、物販店には足を運ばない状況となっている。さらに、その後は消費の手控えがみられており、少し単価の高い当店のような業種はその影響を強く受けて来客数が大幅に減少している。
(2)先行き判断理由
○「やや良くなる」
(百貨店)…消費税の引上げ時期が迫るにつれて、駆け込み需要など、多少はプラスに働くとみている。また、例年よりも高い気温が続いており、夏物消費を後押しすることを期待している。
(コンビニ)…梅雨が短くなり7~8月が暑くなれば景気は良くなると期待している。
(家電量販店)…消費税の引上げ前の駆け込み需要は必ずあると期待しており、景気は一時的に盛り上がるとみている。
(都市型ホテル)…改元により問合せや来客数が増えている。特に低迷していたブライダル関係が一気に増えてきている。消費税の引上げ前の駆け込み需要もあるが、新元号に期待する客の心理もあるとみている。
(建設業)…今後は官庁案件の受注者が確定してくるため、景気が若干上向く可能性がある。
(広告業協会)…消費税の引上げ前の駆け込み需要に向けた告知が活発になる時期のため、広告業界でも期待する声がみられている。しかし、その後の反動も懸念されている。
○「変わらない」
(寝具販売店)…原材料の価格が上がっており、商品自体の価格の値上げも否めない。今年の猛暑の影響がどう出るか相変わらず予想できない状況である。
(スーパー)…改元に伴う一時的な消費拡大はあったものの、インスタント食品、加工食品などの値上げが相次いでおり、消費者は1円でも安く購入しようと苦心している。10月の消費税の引上げを控えて、この傾向は今後も続くとみている。
(衣料品専門店)…7月からサマーセールに入るが、セール期間中の売上は年々減少している。販売量は変わらずに単価が下がるという傾向が続いているため、この先も厳しい状況は変わらないとみている。
(高級レストラン)…ゴールデンウィーク後に来客数が大分落ち込んでおり、いまだに回復していない。2~3か月後の予約状況は例年と比較して余り変化はないが、それ以上を見込むことができていない。
(食料品製造業)…消費税の引上げに対する節約意識が景気のブレーキとなっている。
(金融業)…アベノミクスの恩恵が到達しきっていない地方経済界において、米中貿易摩擦やイラン情勢緊迫化の負の影響はほぼリアルタイムに到達してしまう。
(飲食料品卸売業)…消費税の引上げを控えて消費マインドが上がらず、節約、倹約意識がついて回るとみている。
(人材派遣会社)…アルバイトの採用も困難性が高く、夏商戦への悪影響を懸念する声も出始めている。
(職業安定所)…今後の景況に対して、製造業などでは米中貿易摩擦への不安感を抱いている事業所が見受けられる。ただし、若者労働者の不足により、人手不足感は継続している。
○「やや悪くなる」
(住関連専門店)…受注活動をしてもなかなか物件数が増えず、さらに、その中から成約することが厳しい状況である。そのため、今後2~3か月は現在の受注残を除いて受注量は増加する傾向にない。また、東京オリンピック需要も今年一杯で終了するため、新たな物件は増えないとみている。
(旅行代理店)…これから夏休みの需要が入ってくるが、例年よりもその動きが弱い。前年同期においても100%を上回ることがなく、ものによっては前年比90%前半~80%後半で動いている商品もある。先行きが読めないため、景気はやや悪くなっていくのではないかとみている。
(出版・印刷・同関連産業)…印刷用紙の値上げや不足により、印刷を取りやめてWeb広告へと切り替えるケースが増える見込みであり、印刷業は売上が落ち込みそうである。
(窯業・土石製品製造業)…大型のプロジェクトが終息している地区が多く、新規物件の動きは低調である。
(新聞社[求人広告])…夏場に掛けて選挙モードとなるため、経済的には足踏み状態になるとみている。その後も不透明であり、投資も控え目となるなど、景気浮揚ムードにはなっていない。
東北地域に関する解説は、当センターの責任でまとめたものです。 以上